1250人が本棚に入れています
本棚に追加
*
美凪に会える。
その喜びで胸をいっぱいにして、千尋は家庭科室へと急いだ。
美凪のそばでいられるだけで、自分は幸せだ、と思うのに、どうしてかいたたまれない思いでいっぱいだった。
どうして、結城先輩が好きなんだろう。
「・・・」
頭をぶんぶんと振って、美凪と潤がいちゃいちゃする場面を吹き飛ばした。
考えるな。
考えたくないし!
走る足を速めた時だった。
ドカ!
「ぶっ!!」
「うわっ?!」
角を曲がってきた誰かに、思い切りぶつかってしまった。
「すみませんー」
いらいらする気持ちを抑えて、顔を上げると、
「あ、千尋君だっけ。
奇遇だねぇ」
「・・・結城先輩」
今、1番会いたくない人物の姿があった。
「なんで走ってるの?
まだ、昼休みはたくさんある
のに・・・」
「用事があるんです」
「あ・・・そ、そう?」
千尋の怒りがかいま見えたのか、潤はへらりと笑った。
悔しいけど、そんな笑顔も爽やかだ、と千尋は眉間にしわを寄せた。
「・・・いきなりなんですけど
ー。
結城先輩は、美凪ってどう思
います?」
「美凪ちゃん?」
なんだいきなり、とでも言いたそうに、きょとんとしている。
だけど、千尋としてはこの質問は譲れなかった。
「いい子だと思うけど」
『いい子』。
これは、恋愛対象に入っている言い方なんだろうか?
「そうですか?
じゃあ、ついでに春日は?」
美凪の事だけ聞くと怪しいかと思い、一応 栞の事も聞く事にした。
最初のコメントを投稿しよう!