*第4章*

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潤の背中が見えなくなると、再び美凪の元へと急いだ。 とにかく、そばにいたかった。 ガチャ。 家庭科室に着いて、柄にもなく静かにドアを開けた。 今さら、美凪と2人きりになる事にびびっている自分がいる。 「・・・美凪ー。来た・・・よ」 ひょっこり顔だけを中に入れて、中の様子を伺った。 でも。 「・・・寝てる?」 暇をしているはずの美凪はおらず、机に突っ伏して眠る美凪の姿があった。 「・・・緊張して、損した?」 頭をカリカリとかきながら、そっと美凪のそばへと寄った。 腕に顔を置いて、横向き加減に寝ているため、美凪の寝顔がよく見えた。 「・・・ねぇ、美凪。  結城先輩と会ったよ」 美凪の柔らかいクセ毛を撫でながら話しかけた。 起きてたら、「からかうな」とか、言われるんだろうなぁと考えると、千尋は笑ってしまった。 「俺、・・・美凪の事、本気だ  よ」 それに、結城先輩は春日が好きなんだぞ。 そんな悲しい恋すんなよ。 「・・・美凪、俺・・・」 せめて、美凪が寝ている間だけでも、本当の気持ちを気の済むまで伝えておきたい。 「・・・うぅ・・・ん・・・」 美凪が唸った。 髪を撫でる手のせいか? 「美凪、好き」 「・・・・・・・・・・・・潤、先輩・・・」 薄く開かれた美凪の唇から漏れたのは、悔しいけど、潤の名前だった。 「・・・ははっ」 千尋は乾いた声で笑った。 そうだ。 美凪のそばでいられるだけで、俺は幸せ者なんだ。 想い合いたい、なんて。 俺には、贅沢すぎる。 *  
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