*第4章*

16/42
前へ
/542ページ
次へ
* 千尋にぶつかった後、潤は自分のクラスのある校舎へと戻った。 わざわざ、家庭科室のある別校舎へと出向いていたのは、実は、栞に偶然会ったりできないかという期待があったからだった。 しかし、栞には会えず、かわりに千尋と会った。 そして、栞に想いを寄せている事がバレてしまった。 「・・・馬鹿かぁ?俺」 「潤は馬鹿だよ」 窓枠に背中を預けて自分の髪を弄んでいると、不意に横から声がした。 「常盤」 「うん」 いたのは常盤だった。 「潤、栞ちゃんが好きなんでし  ょ?  瑞貴もお気に入りだから、遠  慮してるの?」 いきなり核心を突いてくる常盤。 あまりにも、さらっと聞いてくるので、潤は目を見開いたまま常盤を見つめた。 「あ、栞ちゃん」 常盤は、そんな潤を無視して窓の外を見てそう言った。 「え?」 慌てて振り返る。 「・・・と、瑞貴」 常盤に付け足された通り、窓から見える中庭のベンチには、栞と瑞貴が2人で座っていた。 あのベンチがある場所を見える場所は、香蘭高校内では限られている。 というよりは、ベンチがある場所を見えるのは、本校舎と家庭科クラスのある校舎を繋ぐ、この渡り廊下からだけだ。 「見てー。あの瑞貴の顔。  あんな顔、私達にもなかなか  見せないのにね」 嬉しそうな声で言う常盤。 俺の気持ちを知っているくせに。 「・・・いいんだよ」 「いいの?」 「・・・」 「少し、頑張ってみたら?」 そう言う常盤の顔を見ると、満面の笑顔だった。 「応援する」 潤の手を取って、常盤はぶんぶんと振った。  
/542ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1250人が本棚に入れています
本棚に追加