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千尋にぶつかった後、潤は自分のクラスのある校舎へと戻った。
わざわざ、家庭科室のある別校舎へと出向いていたのは、実は、栞に偶然会ったりできないかという期待があったからだった。
しかし、栞には会えず、かわりに千尋と会った。
そして、栞に想いを寄せている事がバレてしまった。
「・・・馬鹿かぁ?俺」
「潤は馬鹿だよ」
窓枠に背中を預けて自分の髪を弄んでいると、不意に横から声がした。
「常盤」
「うん」
いたのは常盤だった。
「潤、栞ちゃんが好きなんでし
ょ?
瑞貴もお気に入りだから、遠
慮してるの?」
いきなり核心を突いてくる常盤。
あまりにも、さらっと聞いてくるので、潤は目を見開いたまま常盤を見つめた。
「あ、栞ちゃん」
常盤は、そんな潤を無視して窓の外を見てそう言った。
「え?」
慌てて振り返る。
「・・・と、瑞貴」
常盤に付け足された通り、窓から見える中庭のベンチには、栞と瑞貴が2人で座っていた。
あのベンチがある場所を見える場所は、香蘭高校内では限られている。
というよりは、ベンチがある場所を見えるのは、本校舎と家庭科クラスのある校舎を繋ぐ、この渡り廊下からだけだ。
「見てー。あの瑞貴の顔。
あんな顔、私達にもなかなか
見せないのにね」
嬉しそうな声で言う常盤。
俺の気持ちを知っているくせに。
「・・・いいんだよ」
「いいの?」
「・・・」
「少し、頑張ってみたら?」
そう言う常盤の顔を見ると、満面の笑顔だった。
「応援する」
潤の手を取って、常盤はぶんぶんと振った。
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