なりたくてなった訳じゃない

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  「これで……よし」   鏡の前に立ち、着慣れた制服に包まれた自分の姿を確認する。スカートの長いちょっと地味な制服は、私……いや、僕にとってはとても有り難い物だった。   何故なら僕は「女装」しているからだ。別にやりたくてやっている訳ではない。母に小さい頃から無理やり女の子にさせられていたし、今通っている高校も女学院だ。   2年になった今でも、元々知っている幼なじみの杏以外の生徒には、この事実は知られていない。というより知られたら多分、色々な意味でマズい。社会復帰出来ないくらいマズい。   兎に角知られてはならないが為に、今まで積んだ苦労は尋常じゃない。ましては女学院、イチ(女装)男子の僕にはとても耐え切れるものではない。   「正直溜まります……色々と」
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