なりたくてなった訳じゃない

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  「あー、とりあえずこれでいい?」   僕の肩程度の身長の杏を、優しく抱き寄せる。左手を腰に回し右手で頭を撫でてあげる。凄く綺麗で腰上まである黒い髪は、刺激的過ぎるくらいに良い香りがする。「あんっ」とか変な声出されたけど平常心平常心……。   「明希ちゃん、結婚しよ?」   「考えておくよ……。とりあえず学院行こう?」   杏は少しばかり名残惜しそうに頷く。そして何かを思い付いたかのように僕の腕に抱きついてきた。   「これで私たち新婚さん?」   杏がさぞ幸せそうに目を輝かせながら聞いてきた。可愛いから何でもいいけれど、世間的にはただの仲のいい姉妹にしか見えないだろう。誰も僕が男だなんて気付きはしないんだ。
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