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「朱里。……痛い」
痛みを抱える頬を抑えながらうめく俺。
正直、惨めでしょうがない。
「う、うるさい!お兄ちゃんが悪いんだからね!」
朱里の言いようは正しい。
でもこれはあんまりに、あんまりじゃないだろうか。
「わ、私知らないもん!」と叫びながら、家を飛び出した妹を見ながら俺は嘆息する。
昔は、もっとおしとやかな女の子だったのに、何が原因でこう成長してしまったのやら。
……俺のせいか。
厳しい現実に直面しつつ、ボロボロの体を動かしてリビングまで足を運んだ。
机には焼き鮭、白米、味噌汁といった一般的な朝食が乗せられており、食器が一組だけな事からもう家にいるのは俺だけなのだとしらされた。
「母さんは今日も早くから仕事か」
そう呟きつつ、席についた俺の目に飛び込んできたのは八時を示す掛け時計。
ば、ばかな……三十分も気を失っていたというのか。
愕然とした俺だったが、もっと大変な事は、この時間ならば一緒に当校する相手を待たせているという事実だった。
「ま、まずい!」
◇
「もう!遅いよ!翔平!」
「俺が遅い!?俺がスローリィ!?」
「……意味わかんないよ?翔平?」
家から歩いて数分の交差点で待っていたのは、俺の幼なじみの片桐 風香である。
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