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「……ええ、まあ」
「でしょ? だから皆、希望職を調べるのを趣味程度にしか思ってないの。これで答えになったかしら? エルメスさん」
「うんうん。どうもねー」
そして女性は言う。
「じゃあ今度は私の番ね。キノさん、旅人の旅の目的って何かしら? きっと素敵な目標があって、それに向かって頑張っているのでしょう?」
部屋に戻ったキノは、黒いジャケット姿のままベッドにダイブした。
「ああ…ふかふかだ……」
「そのまま寝るのは不味いと思うよ」
「……ボクもそう思う」
ゆっくりとベッドから体を離して、吊っていたハンド・パースエイダー(注・パースエイダーは銃器。この場合は拳銃)をホルスターごと外した。
「今日は一段と疲れた」
「ご愁傷様」
「……エルメス、寝てたろ」
「うん。だって此処の人達、何言っても聞かないし」
「はぁ……。今日は一杯ご飯を食べて、いつも以上にシャワーを浴びて、寝る」
「いつもの事じゃん」
「そうとも言う」
「多分さぁ、明日も質問攻めに遭うよね」
「ああ。それに備えて、たっぷり体力付けなくちゃ」
そして深く溜息をつくと、ベッドから降りながら言った。
「夢は『見る物』じゃなくて、出来れば『向かうもの』であってほしいよ。…明日、明後日のボクの為にも」
End.
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