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「うわぁ、カッコイイですね!戦ったりするんですか?」
「格好良いかは別として…。山賊さん達に出くわす事もあるので」
「そうそう。キノは道中何度も殺されそうに――イテ」
「山賊かぁ…見た事ないや。それって、戦うって、楽しいですか?」
その質問に、キノは首を横に振る。
「いいえ。好き好んでこれを使う事は、まずないです。使う時は、相手を殺さなくてはならない時ですから」
「でも、相手を倒した時の爽快感はあるでしょう?」
「……いえ。ボクにはないです」
「ああ、良いなぁ…。自然に触れながら、又は世界中の人達と触れ合いながら旅するなんて、楽しいでしょう?」
「はい。けれど、全てが楽しい訳ではありません」
「でも、無い訳ではないでしょう?」
「…………」
押し黙ったキノに、男は笑みを浮かべて言った。
「やっぱり良いなぁ。国の外に出るって、楽しそうだ」
すっかり自分の世界に入ってしまっている男に、キノは、そろそろおいとますると伝え、席を立った。
「貴重なお話、有難うございました。またこの国に遊びに来て下さいね!」
「はい、また。行くよエルメス」
「ふえ? …ああ、りょーかい」
遠ざかっていくエンジン音と背中に、男は一度も目を向けなかった。
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