「夢を見る人達」

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  しばらく走った後。キノは予約を入れておいた格安ホテルの前でエルメスを止めた。 すると、今度は三十代に見える女性がキノ達を見付け、駆け寄って来た。 「まただね」 「これで四人目だ……」 女性は興奮した様子で、息を切らしながら言った。 「旅人さんですよね? 我が国にようこそ!」 「はい。ボクはキノ。こちらは相棒のエルメス」「どもねー」 キノが本日四回目の自己紹介を終えると、女性は慌ただしいまま、 「キノさんにエルメスさんね。ねぇ、もし時間があるのならお話をお願いしても良いかしら」 本日四回目の台詞を言った。 「はいはーい。その前に質問して良い?」 「あら、どうぞ?」 「この国の、『希望通りの職業に就けた人の数』って、どれ位なの?」 「…もしかしてお二人共、この国の誰かとお話した後で?」 「はい。これで四度目です」 「あらまぁ、ごめんなさいね。同じ話を何度も何度も。えっと…希望職に就けた人の割合でしたっけ?」 「はい」「そうそう!」 「そんなの、ほとんど0に近い数字ですよ」 「え?」 「この国では“職場体験”が頻繁に行われていて、国民達は就職に意欲的なんでしょ?」 「ええ、勿論その通り。けれど誰一人、『自分が夢見ていた通りの職業に就ける』だなんて思っていないわ。 夢は夢。世の中そう上手くいっていたら、誰だって苦労しないもの。それは旅人であるキノさんが一番ご存知でしょう?」  
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