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「………っ!!」
心臓にひゅうと冷たい風が吹き込んだような感覚に襲われ反射的にベッドのシーツを掴む。
一瞬何が起こったのか分からずに視線を泳がせた。
何だ、夢か……。
小さい頃…中学生か高校生くらいの頃よく見た夢だ。
そういう“落ちる”夢を見るのは背が伸びている時だ、なんていう話を聞いたことがあるが、本当かどうかは知らない。
「瑠璃…ちゃん?どうしたの?」
隣に裸で寝転んでいるオジサンが声を発する。
あぁ、そうか。
今は仕事中だったのか。
「いえ…あの…少し怖い夢を見ただけです……今日はもう……帰ります……」
脱ぎ捨てた服を拾い集める。
「あ、待って」
オジサンはスーツのポケットから財布を取り出し、私にお札の束を差し出した。
「瑠璃ちゃんにお小遣い」
「え……こんなに貰えないです」
私が眉間に皺を寄せるとオジサンは私の右手に無理矢理お札を握らせた。
「瑠璃ちゃんは他の子と違っていい子だから、特別だよ。枕なしでいいから…また…会ってくれる?」
「……喜んで」
精一杯の笑顔を作ったつもりでいるけど、未だに上手く笑えているのか分からない。
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