四月上旬

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   晴れ渡る空。  爽やかな風。  舞い散る桜。  風流ですね……──散ってるけど。  いいえ皆さん、本来なら花が散って悲観するところです。  そこのネクタイ頭の酔っぱらいのようにドンチャン騒いでる場合ではないのです。  ──と、学校から帰る途中、花見に来た大人たちを見かけた彼女は思っています。 「っくしゅん! ……風邪?」  いえ、花粉です。  一応彼女が主人公です。  名前を宝生百といいます。『ひゃく』じゃなくて『もも』ですよ。  ──え、分かってる?  あら、これは失礼いたしました。  では本文へ。  この四月から中学三年生な彼女。  特徴は、彼女の人間性を見事に表している黒髪と、彼女の心そのものと言っても過言ではないほど濁った灰色の瞳です。  ──何か言いました?  ちなみに、彼女の家は一軒家。  なんて羨まし──じゃなかった。  更に言うと、四人兄弟。兄が二人と妹一人。  まぁ家族については追々話すと思うので、とりあえず今はカットします。  ──いいえ、面倒くさがってなんかいませんよ決して。
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