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その辺をぶらぶらと歩きまわって、また万事屋に帰ってきた。
階段を上がり玄関を開けたが、そこにはソファーに座り、お茶をのんびりと啜る新八しかいなかった。
まだ、帰ってきていない…
「神楽ちゃん?」
新八がお茶の入った湯のみを机に戻し、心配そうに声をかけてきた。
「ぼーっとしちゃって、どうしたの?」
「ううん、何でもないネ」
嫌な胸騒ぎがした。
何かが壊れてしまうような…
よほど暗い顔をしていたのか、新八は俯く私の顔を覗き込んできて、にこりと笑ってみせた。
「銀さんの事が心配なんでしょ?」
「…っなんで」
図星されて慌てる私を見て、やっぱりなぁと言って、新八はふっと微笑んだ。
「神楽ちゃん、すぐに顔に出るんだもの」
「え?」
気付かなかった。
新八はよく見てるアルなぁ。
「私、おかしいネ。銀ちゃんがいないと落ち着かないなんて…」
「神楽ちゃん…」
でも…私が不安なのはこれだけが原因じゃない。
「…嫌な予感がするネ」
「嫌な…予感?」
私の言葉に、新八が疑問符を頭に浮かべながら聞き返した。
私はこくりと頷く。
「そうか…まぁ確かに銀さんひとりだけで仕事っていうのは心配だよね」
新八はぽつりと呟くと、私の頭をよしよしと優しく撫でた。
「でも大丈夫だよ」
気休めの言葉かもしれないけど、私にとってこの言葉は安心をくれた。
「ありがと、新八」
にこりと笑うと、新八も同じように笑った。
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