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「わんっ」
定春の方を振り返ると、『水をくれ』と言わんばかりに吠えていた。
「ああ、定春ごめんネ。今、水用意するからネ」
水飲み用の容器を持って台所へと駆けた。
―――ピンポーン
水を注いでいると、インターホンが鳴った。
「はーい」
新八が玄関へと小走りで向かった。
「あれ?桂さんじゃないですか」
…ヅラ?
なんでヅラがこんなところに?
そう思っていると…
「ぎ、銀さん!?」
新八の裏返った声が聞こえた。
不思議に思って台所からひょこっと顔を出すと、私はとっさに言葉が出なかった。
ヅラに肩を貸してもらっている銀ちゃんはぐったりとしていて、身にまとう白い着物はずたずたに破け血が散っていた。
「銀ちゃん!?」
私は容器を投げ捨て、銀ちゃんの傍へ駆け寄った。
「銀ちゃん、銀ちゃん!!」
何度も彼の名を呼ぶ。
泣きながら銀ちゃんにしがみつく私を、ヅラが手で制した。
「落ち着け、リーダー。怪我はひどいが命に別状はない」
ヅラの言葉にほっと胸をなで下ろす。
でもおびただしい血を見る限り、油断はできない。
「早く止血をしなければならん。新八君、銀時を部屋まで運ぶのを手伝ってくれ」
「は、はいッ!!」
「リーダーは布団の準備と、救急箱を用意を」
「わかったアル!!」
私はヅラの指示に頷き、素早く銀ちゃんの部屋に行って布団を敷き、救急箱をいつもしまっているところから引っ張り出した。
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