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「んで、なんでヅラがここにいんの?」
俺はヅラを指差し、軽く睨みつけた。
すると、「ヅラじゃない、桂だ!」というお決まりの台詞を大声で叫んだ。
その辺は華麗にスルーする。
よく飽きないよな。
俺はいい加減聞き飽きた。
「高杉がまた変な動きを見せていてな。調べていたら、お前が路地裏で血まみれで倒れているのを見つけた、というワケだ」
「変な動きって、褌一丁で踊り出したとかか?」
「…馬鹿だろ」
「んだとゴルァ。冗談に決まってんだろカス」
ばちばちと目線に稲妻がはしる。
「ちょっ、銀さん」
新八が止めに入ったが構わない。
ヅラはため息をつき、珍しく真剣な顔で俺を見た。
「冗談はここまでとしておこう。今、高杉は港に船を止めていて、いつテロを仕掛けるかわからん状態だ」
「ふーん」
「…聞く気あるか?」
「全然」
「………」
ヅラの額に青筋が浮き上がった。
さすがに、ちとからかい過ぎたか。
「悪ィ悪ィ。んな怖い顔すんなって」
「…まァいい。とにかく高杉の今後の動きが気になる。お前も気をつけた方がいいだろう」
「わかったよ。忠告ありがとな」
俺はふっと笑った。
俺が笑うと同時に、新八と神楽の肩から力が抜けたのがわかった。
「さて、話が終わったところで、俺はもう帰るぞ」
「さっさと帰れ、攘夷浪士。とっとと捕まれ、攘夷浪士」
俺が毒づくと、ヅラの眉が少しぴくっと動いた。
そして、そのまま顔を俺の耳元にもってきた。
んだよ、気持ち悪いな。
「…本当に、気をつけろよ」
ヅラが聞こえるか聞こえないかの声でそう言った。
何をそんなに心配してるんだか。
それとも、ヅラは俺がこれから何をしようとしているのか、気付いたのかもしれないな。
俺は少し笑って、去って行くヅラの背中にひらひらと手を振った。
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