第2章 傷

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「んで、なんでヅラがここにいんの?」 俺はヅラを指差し、軽く睨みつけた。 すると、「ヅラじゃない、桂だ!」というお決まりの台詞を大声で叫んだ。 その辺は華麗にスルーする。 よく飽きないよな。 俺はいい加減聞き飽きた。 「高杉がまた変な動きを見せていてな。調べていたら、お前が路地裏で血まみれで倒れているのを見つけた、というワケだ」 「変な動きって、褌一丁で踊り出したとかか?」 「…馬鹿だろ」 「んだとゴルァ。冗談に決まってんだろカス」 ばちばちと目線に稲妻がはしる。 「ちょっ、銀さん」 新八が止めに入ったが構わない。 ヅラはため息をつき、珍しく真剣な顔で俺を見た。 「冗談はここまでとしておこう。今、高杉は港に船を止めていて、いつテロを仕掛けるかわからん状態だ」 「ふーん」 「…聞く気あるか?」 「全然」 「………」 ヅラの額に青筋が浮き上がった。 さすがに、ちとからかい過ぎたか。 「悪ィ悪ィ。んな怖い顔すんなって」 「…まァいい。とにかく高杉の今後の動きが気になる。お前も気をつけた方がいいだろう」 「わかったよ。忠告ありがとな」 俺はふっと笑った。 俺が笑うと同時に、新八と神楽の肩から力が抜けたのがわかった。 「さて、話が終わったところで、俺はもう帰るぞ」 「さっさと帰れ、攘夷浪士。とっとと捕まれ、攘夷浪士」 俺が毒づくと、ヅラの眉が少しぴくっと動いた。 そして、そのまま顔を俺の耳元にもってきた。 んだよ、気持ち悪いな。 「…本当に、気をつけろよ」 ヅラが聞こえるか聞こえないかの声でそう言った。 何をそんなに心配してるんだか。 それとも、ヅラは俺がこれから何をしようとしているのか、気付いたのかもしれないな。 俺は少し笑って、去って行くヅラの背中にひらひらと手を振った。 .
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