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夜中。
叩きつけるような雨の音が響きわたる部屋の中で、私は目覚めた。
なんだか嫌な予感がした。
ぼーっとしていたが、小さな物音が聞こえ、意識が一気に覚醒した。
ど、泥棒!?
新八は自分の家に帰ったので、今この家にいるのは私と銀ちゃんだけだ。
押し入れをそーっと開けて確かめると、そこには動く人影がひとつ。
「だ、誰?」
声をかけると人影の肩がびくりと跳ね、こちらを振り返った。
暗くてぼんやりとしかわからないが、どうやらこの影は…
「銀ちゃん?」
そう声をかけると、銀ちゃんは苦笑いを浮かべた。
「はは、起こしちまったか」
頭をぼりぼりと掻き、「ごめんな」と謝った。
「どうしたネ?怪我、まだ治ってないから寝てなきゃダメヨ」
「実はな、依頼された仕事が残っているんだ」
「仕事?でも今日は…」
「今日じゃなきゃダメなんだ。行かせてくれ」
「な?」と言って銀ちゃんは私の頭を撫でた。
…ズルい。
私は銀ちゃんに頭を撫でられるのが好きだから、こんなふうに優しく撫でられたら何にも言えなくなる。
「早く、帰ってきてネ?」
「…ああ」
銀ちゃんは何故か悲しそうな笑顔を浮かべ、外へと出て行った。
「…ッ銀ちゃん!」
しばらくその場に立ち尽くしていたが、やっぱりあの悲しそうな笑顔が気になって、勢いよく外へと出た。
しかし…
そこにはただ、雨の音だけがあるだけだった…
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