第3章 距離

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「何、銀時がいなくなった!?」 いつもと変わらず、キャバクラの勧誘のバイトをしていたヅラは、驚いて目を見開いた。 「そうなんです…ていうか、桂さん。いつも思うんですけど、こんな公の場でバイトなんかして、捕まらないんですか?」 新八が聞くのも無理はない。 ここは江戸の中でも人通りが多いところである。 しかし、ヅラは自慢げに胸を張った。 「俺は『逃げの小太郎』と言われるくらい、変装が上手いからな。心配は御無用だ」 「………上手くねェよ」 新八は呆れたようにため息をこぼした。 …話が進まない。 私が新八、と名を呼ぶと、「しまった」と呟いた。 おいおい、しっかりしろヨ。 「桂さん、銀さんがどこに行ったか、心あたりありませんか?」 「ふむ…」 ヅラは腕を組み、右手を顎に当てた。 「心あたり…か」 「何かあるんですか!?」 新八は期待の満ちた目でヅラを見た。 私もヅラの言葉を待った。 「…港に潜伏している、高杉のところだ」 高杉。 その名は、あの日…紅桜の事件があった時を思い出させた。 あのヤバい匂いのするヤツのところに、銀ちゃんが… 私は不安で胸が押し潰されそうになった。 銀ちゃんが、危ない。 「桂さん、ありがとうございました。今からそこに行ってきます。神楽ちゃん、行くよ」 私は新八の言葉に頷くと、港の方へ駆け出した。 「待て、ふたりとも」 背後からヅラが引き止めた。 「お前達ふたりだけじゃ危険だ。俺達も行く」 そう言ったヅラの後ろでは、エリーも大きく頷いていた。 手持ちの看板には『もちろん、俺も行くぜ』と書いてあった。 「ありがと…」 心強い味方。 私の胸は喜びでいっぱいになった。 .
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