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「何、銀時がいなくなった!?」
いつもと変わらず、キャバクラの勧誘のバイトをしていたヅラは、驚いて目を見開いた。
「そうなんです…ていうか、桂さん。いつも思うんですけど、こんな公の場でバイトなんかして、捕まらないんですか?」
新八が聞くのも無理はない。
ここは江戸の中でも人通りが多いところである。
しかし、ヅラは自慢げに胸を張った。
「俺は『逃げの小太郎』と言われるくらい、変装が上手いからな。心配は御無用だ」
「………上手くねェよ」
新八は呆れたようにため息をこぼした。
…話が進まない。
私が新八、と名を呼ぶと、「しまった」と呟いた。
おいおい、しっかりしろヨ。
「桂さん、銀さんがどこに行ったか、心あたりありませんか?」
「ふむ…」
ヅラは腕を組み、右手を顎に当てた。
「心あたり…か」
「何かあるんですか!?」
新八は期待の満ちた目でヅラを見た。
私もヅラの言葉を待った。
「…港に潜伏している、高杉のところだ」
高杉。
その名は、あの日…紅桜の事件があった時を思い出させた。
あのヤバい匂いのするヤツのところに、銀ちゃんが…
私は不安で胸が押し潰されそうになった。
銀ちゃんが、危ない。
「桂さん、ありがとうございました。今からそこに行ってきます。神楽ちゃん、行くよ」
私は新八の言葉に頷くと、港の方へ駆け出した。
「待て、ふたりとも」
背後からヅラが引き止めた。
「お前達ふたりだけじゃ危険だ。俺達も行く」
そう言ったヅラの後ろでは、エリーも大きく頷いていた。
手持ちの看板には『もちろん、俺も行くぜ』と書いてあった。
「ありがと…」
心強い味方。
私の胸は喜びでいっぱいになった。
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