第1章 日常

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「と言うかよー、個人指名とか俺も結構有名人だよなー」 にやにやしながら話すと、新八は明らかに殺気をはらでいる目で、俺を睨みつけた。 それどころか、殴りかかろうとする自分の右手を必死に止めている。 皆さーん! 最近の餓鬼はすぐキレるから、気をつけましょう!! 「とにかくだ。行ってくるぜ」 俺は右手を軽く上げ、玄関へと向かって行った。 「行ってらしゃーい」 「行ってらしゃいヨー」 背中から声をかけられる。 振り返ると、ふたりがにっと笑いながら俺に手を振っていた。 なんだかんだ毒づいても、笑顔で送り出してくれる。 そんなふたりを見て、自然と笑みがこぼれた。 俺もふたりに笑いかけ、依頼者のところへ向かった。 この時、気付くべきだったんだ。 万事屋が3人でやっている事は、この江戸じゃ至る所に知れている。 なのに、俺だけで来てほしいだなんてのは、おかしいという事に… この仕事の依頼が、この後訪れる悲劇の始まりだという事に、俺達はまだ、気付いていない… .
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