おやすみなさい 【1】

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Γ気分悪かったん?タク呼ぼか?」 妙な親近感と年下だろうという予想から、くだけた喋りになった。 Γあ、大丈夫です。ほんまにありがとうございました」 あの連絡先、と続く言葉を制した。 Γええよ、俺大したことしてへんし。それもやるわ」 ハンカチを指差した。 でも… そう言いかけると、男は何か思い出したようにパンツのポケットを探り始めた。 Γもしよかったら来て下さい。こんなんしかなくてすいません」 差し出したのはカラオケ有名チェーン店の割引券だった。 裏返すと、店名が印刷してある。 Γ俺、ここで働いてるんです」 いつでも待ってるんで、と男は笑顔を見せた。 Γ…おぉ。機会があったら行くわ。いや絶対行くわ」 そう宣言し、俺たちは別れた。 名前も知らない今日初めて会った男。 もう一度割引券を見る。 ―また会えるんかな。 ふっと笑みを洩らし、大事そうにポケットに入れた。 つづく
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