200人が本棚に入れています
本棚に追加
Γ気分悪かったん?タク呼ぼか?」
妙な親近感と年下だろうという予想から、くだけた喋りになった。
Γあ、大丈夫です。ほんまにありがとうございました」
あの連絡先、と続く言葉を制した。
Γええよ、俺大したことしてへんし。それもやるわ」
ハンカチを指差した。
でも…
そう言いかけると、男は何か思い出したようにパンツのポケットを探り始めた。
Γもしよかったら来て下さい。こんなんしかなくてすいません」
差し出したのはカラオケ有名チェーン店の割引券だった。
裏返すと、店名が印刷してある。
Γ俺、ここで働いてるんです」
いつでも待ってるんで、と男は笑顔を見せた。
Γ…おぉ。機会があったら行くわ。いや絶対行くわ」
そう宣言し、俺たちは別れた。
名前も知らない今日初めて会った男。
もう一度割引券を見る。
―また会えるんかな。
ふっと笑みを洩らし、大事そうにポケットに入れた。
つづく
最初のコメントを投稿しよう!