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息が止まる音がした。
「 」
意識はまだ、そこにあるというのに。
貴方はまだ、ここにあり温もりすら感じるのに。
息が止まる音がした。
これが運命、という名のシナリオならば私はそれを破り捨ててやるつもりでいた。
「歴史」は運命よりも強固。
それでいて脆い。
人に忘れられてしまえば消え逝くのが歴史。
息が止まる音がした。
それは、今まで噛み合わなかった歯車がカチリと音を立てて廻りだすように気持ちの良い悲しい音。
噛み合わない歯車に乗っていた私達は、廻りだす歯車に落とされてしまう。
どこで間違えたのだろう、と悲鳴を上げながら廻る歯車を見上げる。
これが、歴史の書き換えの後に生まれた人間の末路。
歴史の修復は、完璧だった。
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