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梅雨は、嫌いだった。
ざあああああ…―
「俺は、もう疲れたよ…母さん、…世界は真っ暗だ。」
大粒の滴が叩きつけるように地面を濡らす。
目を瞑ったまま空を見上げ濡れきって額にはりつく前髪を後ろにかきあげた。
「俺、頑張った…よな?」
体中に激しい雨の滴をうけながらそう呟いて静かに目を開けて下を見る。
昔、母さんと花火をみるとき登った歩道橋。ビルが建って工場ができて煙突や高い建物で、もう花火が見えることはなくなった。
…低くは、ない。
立ってみて改めて思った。
人気の少ない歩道橋の真ん中より少し左よりの手すりの向こう。
繋ぐのは背中をぴったりくっつけた手すりを握る手と、立っている少しの足場だけ。
俺は今、俺を終わらせようとしている。
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