私の愛した可愛い子

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「来人」 名前を呼ぶと、びくっと肩をあげた。 一回でも瞬きしたら涙がこぼれ落ちそうだ。 「私は君を守るためにここへ来た。だから怖がらなくていい」 来人は何も答えない。 ただじいっと泣きそうな目でこっちを見ている。 何て可哀想な目をしているのだろう。 このぐらいの年の子供を今までも何度も見てきたが、こんなに他人に怯える子供は見たことがない。 若菜といるときは笑顔で年相応の子供の顔をしていたのに、今の顔はまるで捨てられた猫のようだ。 なんと可哀想なのだろう。 「来人。今すぐに君と打ち解けるとは思っていない。ゆっくりでいい、来人でペースで仲良くしてくれないか?」 自分でも驚くくらいやさしい声が自然に出た。 会って間もないがこの子をを守ってあげたい、そう感じてしまった。 「…似てる」 「え?」 来人がぽつりとつぶやく。 「目が…」 「目?」 「お父様や冴子お姉ちゃん、若菜お姉ちゃんと同じ暖かい目…」 ふわり 一瞬そんな効果音が聞こえた気がした。 来人が笑っていた。 「ファングは優しい人。その暖かい目だで分かった」 「来人…」 胸がとても暖かくなった。 子供一人にこんなにも一生懸命になっている自分に驚いたが、それよりも来人と少し近づけた事がとにかく嬉しかった。 左手でやさしく頭を撫でてやると、来人は目を細めて笑ってくれた。 つられて自分も笑っていた。   
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