私の愛した可愛い子

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来人と簡単な挨拶をすますと、琉兵衛は冴子、若菜、来人を部屋から出した。 「どうだねうちの来人は。なかなかの男前だろう」 「まさかたかがそれだけの理由で護衛を?」 私が眉を顰めると琉兵衛が声を上げて笑った。 「ハッハッハ。私もそこまで親バカではないよ。ただね、ここからは誰にも言わないと誓いなさい」 私がコクリと頷くと琉兵衛は満足そうに笑った。 「来人はこの世界を変える存在なんだよ、ファング」 「何をバ…」 バカな事を、と続くはずの言葉が琉兵衛の目に飲み込まれた。 口元は笑ったままだが目が本気だ。 「あの子はね、私の知恵と技術を駆使しこの世に生まれた天才子なのだよ。地球の未来を担う人間、来人の名前の由来だ」 「私に何をしろと…?」 「簡単だ、来人をこの家から一切出すな」 「何?」 「家の外は来人にとって何もかも新鮮で影響が強すぎる。だからその誘惑から来人を護衛して欲しい」 「要するに一生あの子の世話役って事か」 琉兵衛は満足そうに頷いた。 「簡単だな。それで私の一生の生活が保証されるとはおいしい依頼だ」 フッと私が鼻で笑うと、琉兵衛は歯を見せて笑った。 「今は……な」 「何?」 「何年か先いずれ分かる。何せ来人は地球の未来を担う人間だからね、並大抵の容姿、仕草、知恵な訳じゃない。まぁ、分かっても依頼を果たす義務を忘れんようにな。もし依頼を失敗する事があったなら」 琉兵衛が真っ直ぐ私を見つめたっぷり間をおいてから口を開いた。 「命はないと思いなさい」 背後に漂うオーラ、わざとらしく歯を見せる笑顔、これは間違いなく冗談ではないと一瞬で感じとった。 いつの間にか強く拳握っていて、汗でしっとりとしていた。 「さぁ、今日からしっかり頼むぞファングよ。もう一度言うが失敗したならば」 「命はない、重々承知だ」 私の返答満足したのかまた声をあげて笑った。 「では来なさい。来人の部屋に案内しよう」 琉兵衛に連れられ大きな屋敷にある一つのドアの前に立った。 琉兵衛の視線を感じ目線を左下に寄せるとこくりと頷いている姿が見えた。 右手を上げてその扉をノックした。  
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