異変

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「時間が無い。」 大和は決断した。 「……置いて行こう。」 「え?」 彩は呆気に取られた。 「このままじゃ全員殺されちまう。」 「でも酷すぎるよ……」 「美佳はもう……とにかく、俺たちは、生き残ろう。」 大和は泣いていた。 「でも……」 「行こう。」 大和は半ば無理矢理に、彩と弘を連れ出した。 「ふん。あと5分だ。」 後ろにいる従業員が時計を見ながら言う。 「彩、弘、とにかく急げ!」 足元がおぼつかない2人をなんとか走らせる。 (きっとこれが最善の手なんだ。ごめん、美佳。) 「美佳、ごめん……ごめんね。」 最後の別れの挨拶にも、美佳は反応しなかった。 (これでいいの……私が何かしゃべったら、余計混乱するもんね。) なんとか生きていた美佳は、顔をあげ3人の後ろ姿を見る。 3人の姿が遠ざかっていく。 感情が溢れ出してきた。 涙が止まらなくなった。 「やっぱり寂しいよ……彩……たすけ……」 やがて美佳は息を引き取った……
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