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「……」
数時間は走っただろうか。
結局、何も出来ずに座ったままでいるしかなかった。
それに、緊張が限界に達していた。
いつの間にか身体中が、冷や汗でびしょ濡れになっていた。
視界が遮られているので、周りの音が自ずと良く聞こえる。
「うぅ……」
「はあはあはあ……」
泣いている者や、過呼吸を起こしそうな者もいる。
「皆、大丈夫か……」
こんな時にも早見は皆を気遣おうとしていた。
次第にバスの速度が遅くなり、停車した。
信号待ちだ。
「もしもし、到着した。」
どうやら信号待ちでは無いようだ。
従業員が誰かと連絡を取り合っている。
ようやく到着したらしい。全然待ち遠しくないけど。今すぐにここから逃げ出したい……
ゴォオオオ……
前方から轟音が聞こえてきた。
そして、再びバスが前へと動き出した。
さっきのは扉が開いた音なのか……?
だとしたら、密閉された空間に入れられるということだ。
不安は増幅する一方だった。
ゴォオオオ……
バスが停車した後、再び轟音が。
扉が閉められた……どこかに閉じ込められた……
「もうアイマスクは外していいぞ。到着だ。」
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