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「わかりました……」
早見は覚悟を決め、ハシゴに手をかけようとする。
「いや、お前は最後まで残っていてくれ。俺が行く。」
早見を制し、弘が先にハシゴに手をかけた。
「弘……」
「俺は大丈夫だ。お前は、皆を支えてやってくれ。とにかく、生き残ることだけを考えよう。」
「弘君……大丈夫なの……?」
彩をはじめ、女子達はかなり心配している。
「こういうのは、下を見なければ大したことはない。上だけを見て登るんだ。」
弘は優しく言う。女子達の不安を少しでも払拭しようとする。
「行ってくる。上で待ってるぞ。」
そう言い、弘が先陣を切った。
上だけを見て、テンポよく順調に登っていく。
俺たちは上を見上げて、弘を見守る。
弘の姿はどんどん小さくなっていき、やがて見えなくなった。
20階という高さまで続いているハシゴがどれくらい長いのか、下からでは見えない。とにかく、途方も無く長い。
しばらくして、川口が口を開いた。
「次。」
一言、携帯の画面を見ながら言う。
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