悪魔

10/21
前へ
/78ページ
次へ
《大和視点》 「さてと……」 「油断は禁物だからな、大和。」 「わかってるよ、早見。」 油断はしていないが、万が一にも、俺が失敗することは無いだろう。 高所恐怖症ではないし、仮に下を見てしまっても動揺はしない。 「じゃ、行ってくる!」 ハシゴに手を掛け、テンポよく登っていく。 この縦に細長い空間には、所々に照明があるため、視界が悪いという事は無い。 だが、中々ゴールは見えてこない。 それに、途中で他のフロアとは一切繋がっていない。 なんでこんな無駄な空間を作ったんだろう? 緊急時の避難用にするなら、他のフロアとも繋げないと意味がない。 それとも、俺達にこういう事をさせる為だけに作られた空間なのか? そう考えを募らせていると、上方の視界が変わってきた。 「大和!もう少しだ!」 上から弘の声がする。 もう少しでゴールだ。 「よっしゃあ!」 俺は声を上げ、ラストスパートをかけることにする。 「ぐああああああ!!!」 突如、全身に強い痛みがほとばしる。 ハシゴを掴む手に力が入らなくなり、手を離してしまう。 俺の体は、落下を始めた…… 「大和ぉー!!!」 全身の至る所をハシゴにぶつけながら落下している為、身体中から出血をする。 「……大和ー!」 叫んでいる弘の声が遠くなっていく…… 俺、死ぬんだな…… なんで、俺だけこんな事に……
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1567人が本棚に入れています
本棚に追加