悪魔

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「……」 誰も登ろうとしないまま、時間だけが過ぎていく。 皆、誰かが登ると言うまで待つつもりだ…… ひどく自己中心的な考えだが、今の状況じゃ、誰かが一回登りきってくれないと、とてもじゃないが登りたくない。 「行くっきゃないか~」 しびれを切らし、とうとう武(たけし)が言う。 皆、ほっとしているだろう…… そして、武が成功することを祈るしかない。 「武、まじごめん……」 「ごめん……」 何人かが罪悪感に苛まれ、武に謝る。 「ハハハ……まあプレッシャーには強い方だから。」 武は笑みを浮かべている。その笑顔が、ずいぶん頼もしい顔に見える。 「細心の注意をすれば、きっと大丈夫さ。」 武は登っていった。 「武!!」 さっきと同じ音が聞こえてきた…… 何かがハシゴにぶつかっている音。大和の時と同じだ。 そして、変わり果てた武が地上に落ちてきた…… 大和と武、二人が犠牲になってしまった。 「なんでだよ……」 俺達は泣き続けた。
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