1567人が本棚に入れています
本棚に追加
「……」
誰も登ろうとしないまま、時間だけが過ぎていく。
皆、誰かが登ると言うまで待つつもりだ……
ひどく自己中心的な考えだが、今の状況じゃ、誰かが一回登りきってくれないと、とてもじゃないが登りたくない。
「行くっきゃないか~」
しびれを切らし、とうとう武(たけし)が言う。
皆、ほっとしているだろう……
そして、武が成功することを祈るしかない。
「武、まじごめん……」
「ごめん……」
何人かが罪悪感に苛まれ、武に謝る。
「ハハハ……まあプレッシャーには強い方だから。」
武は笑みを浮かべている。その笑顔が、ずいぶん頼もしい顔に見える。
「細心の注意をすれば、きっと大丈夫さ。」
武は登っていった。
「武!!」
さっきと同じ音が聞こえてきた……
何かがハシゴにぶつかっている音。大和の時と同じだ。
そして、変わり果てた武が地上に落ちてきた……
大和と武、二人が犠牲になってしまった。
「なんでだよ……」
俺達は泣き続けた。
最初のコメントを投稿しよう!