天国の記憶

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気がつくと、白い光の空間にいた。 円形の部屋の壁に、螺旋状の階段が付けてある。足下には、月のエンブレムが描かれていた。 『ようこそ。貴女は天国行きです。』 振り向くと白い髪の少女がいた。 「……本当にあるんだ……」 少女はクスクス笑いながら言った。 『地獄はないの。特別な人だけここに来れるから、他はみんな(空間)行きよ』 特別なこと…?顔からか、心を読んだのか、答えてくれた。 『貴女ね、名前が(杏朱)って言うでしょ?』 空中にローマ字でAnjuと碧い光の輪郭で文字を書いた。 その先は知ってる。 『杏朱はフランス語で(天使)って意味よね』 だから?そんな理由で? 『気にしなくてもいいよ。動物にはすごく優しいでしょ?貴女はガブリエルの属性強いの』 「でも、タダで天国行きじゃあないでしょ?」 少女は頷いて言った。 『この階段を登って。途中でドアが出て来たら、その中で(人助け)しながらね。貴女に課せられた(人助け)は、交通事故から人を救うこと。ケガだけにさせることね。』 私が事故で死んだからだ。 「全て登りきったら?」そうね…と少女が呟く。 『生まれ変わったら、ネコになりたいって言ったよね』 確かに結構ネコで通してる。 『白ネコで、首に月のマーク付けて、恋人のそばに帰してあげる。…その人が亡くなるまで、ずっと転生はその姿』 「分かった。ありがとう。」 『気を付けて。失敗すると、空間に落ちてしまうから』 何言ってんの。と私は言った。 「私は天使。落ちる前に、飛べるから」 『貴女なら、不可能じゃないかもね』 少女は微笑みながら、私をみた。 それに頷いて、私は階段を駆け上がって行った。
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