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を轢き逃げしたのと同じ車が飛び出した。
(人間そうカンタンにくたばんないからなぁ)
克也はよくそう言った。
(まだ死にはしないから大丈夫だよ)
そうも言った。
「ったく…どいつもこいつも…」
車はすぐそこまで迫っていた。
『嘘ばっかりーーーーーーーーーーーー!!』
叫んで克也を勢いよく突き飛ばした。
「っ!!」
克也は私に気がついた。
「…杏…朱……?」
私は克也に微笑み返して、消えた。
階段に帰ると、翼が無くなった。舞い上がる羽根の中で、階段が足下から崩れていく。私は落ちて行った。
『……!あれは……』
少女は信じられないと言うように声を発した。
怖々目を開けると、光を纏って浮いていた。
光は翼の形となり、羽ばたきはじめた。
『すごい!貴女、(真理の翼)があつかえるの?』
聞いたことがない。使い方も知らない。勝手に出たのだ。
(杏朱…)
聞き慣れた声がすぐそこで聞こえた。
隣りに、克也がいた。
「助け……られなかったの……?」
問うと、克也は答えた。
(一緒に…居たかった。自分の意志で、付いて来た。)
ちょうど仕事も学校も面倒だったし。と、いつも通りの笑顔で。
『じゃあ、ノ~カウント!ガブリエル、お幸せに……』
少女は克也に向き直り、
『(ソロモン)……。獣の天使は、貴方にしか心を赦さないから。大切にね』
克也は優しく頷いた。
真理の翼を2人で分け、共に最上階へと登って行った。少女が叫んだ。
『本当。不可能じゃなかったね!…その代わり、天使として2人に残ってもらうよ!』
私は元気よく答えた。
「もちろん!引き受けるよ!」
克也も頷いている。
その方が、ずっと2人でいられるから。
と、その時
『あれ…お客様かも!じゃあ2人とも、あとは上の天使達にお世話してもらってね!』
少女は言うや否や、見えなくなった。
私と克也はゆっくりと舞い上がって行った。
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