プロローグ   桜色の季節

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 春風に吹かれて、桜が舞う。  鮮やかなピンクが殺風景なコンクリートの道を彩るその光景は、まるで桜が僕らの入学を歓迎しているかのようだった。  というのは流石にロマンチックすぎるが、それでもなぜか嬉しい気持ちにさせられる。綺麗な景色とは、それだけで人を幸せにするものなんだなと僕は改めて実感した。  ざっと周りを見渡す。周りには、僕と同じく新入生と思わしき人が何人かいた。  例えば、白と紺のコントラストと配色のセーラー服を着た少し緊張気味の人。女装癖のある男子でないかぎり女の子であろうその人は、いかにも新入生ですといったオーラを醸し出している。  他にはもちろん、男子もいた。だがファッションがいただけない。黒い学生服に黒いズボン、おまけに黒い髪の毛とカラスもびっくりな黒づくめスタイルを平気な顔をして着ている。センスの欠片も感じさせないその格好がお前は恥ずかしくないのか、と心の中でツッコんだ。まぁ僕も同じ格好してるけど。
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