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もうすぐ夕食。
だというのに兄さんは帰ってこない。
自分の席につき、苛々と時計を眺める。
お腹が空いているだけで、兄さんが帰ってこないことに苛立っているわけではない。
行儀が悪いとわかっていながら、指先でテーブルを叩くのをやめられない。
兄さんはまだ帰って来ない。
全く、妹の誕生日をなんだと思っているのだろう、あの朴念人。
……まだ、帰って来ない。
テーブルの上に並べられた料理。
兄さんの分にだけ、ラップが被せてあるのが悲しい。
早く、帰ってきて。
皆が席についた。
対面の空席を見やる。
……本当にとうとう帰ってこなかった。
兄さんの馬鹿!
皆がいただきますを言おうとした、その時だった。
「ただいま戻りました」
来た!
一瞬腰を浮かしかけ、すぐに座り直す。
兄さんは当然のことをしただけだ。
それを出迎えて労う必要はない。
別に、嬉しさを隠しきれない顔を見られたくないとか、そんなんじゃない。
一旦自室で着替えてきた兄さんの手にはなんの飾り気もない、薄茶色の紙袋。
例年通りだ。
その例年通りが、少しだけ嬉しい。
それにしても、贈答用の袋に入れてもらうくらいのことは出来ないのだろうか?
兄さんのバカ。
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