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浩司「あああっ!」
このえ「……」
浩司「今の……万引きじゃあ……?」
このえ「……そうですね」
浩司「何で……そんなあっさりしているんですか……」
このえ「何でって……」
浩司「普通なら、追うなり警察に連絡するなり、するでしょう!」
このえ「なら、あなたがやってください」
浩司「どうして、そんな……! あなたの店でしょう!」
このえ「そうですね。私の働いている店です」
浩司「ならなんで……」
このえ「あの子は……本当なら、ああいうことをする子じゃないと思うんです……」
浩司「……?」
このえ「だから、ヘタに手をだして辛い思いをさせるよりも、黙って見逃した方がいいんじゃないかと思うんです……」
浩司「それは……」
このえ「わかってます、ずれたことを言っているって」
浩司「……」
このえ「でも、私にはこれ以上のことが思い浮かばないんです……」
浩司「……」
無言の空間。両者動かない。真剣な空気。
浩司「……帰ります」
このえ「そうですか……」
浩司「……困っている人の手助けをするのは、黙って見ていることじゃないと、俺は思います」
このえ「……」
浩司「……また来ます。待っててください!」
このえ「! 来ないでください!」
浩司、店から出る。
このえ「………………まっすぐな、ひと……」
このえ、一人、呟く。
暗転(時間の経過)。
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