1.元旦

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「ていうかさあ、誰? これ」  高校生になったばかりの理沙。お正月はなんだかんだ言っても年賀ハガキが来るのが楽しみだ。  同じクラスの子や、昔から仲良しの友達からきた年賀ハガキを見ながら顔をほころばせていたところ、可愛い絵と写真でにぎやかなハガキの束から、シンプルな雪山の絵ハガキを抜き出した。  一瞬表情がなくなる。 「お父さん宛じゃなくて?」  ハガキの宛名はどうみても自分の名前。  はっきり言って、雪山の写真でハガキを送ってくるような渋い趣味の友達は全然思い当たらない。もう一度宛名を見直してみたけれど、やっぱり自分宛てに間違いない。裏返して雪山の写真を見てみると、写真の下には山の名前がアルファベットで印刷されていた。  スペルは何となくヨーロッパ風な感じ。 「ドイツ語かな? あたしそんなところの山なんて知らないし」  山の名前らしき文字の下には、――from F M――と黒いペンで書いたサインがあった。  送り主が書いたんだろうか。  文面といえば「A HAPPY NEW YEAR!」「久し振り!俺のこと覚えてる? 雪の降る日に会いに行くから」とある。 「会いにってさあ、だからあんた誰よっ」  差出人住所も名前も書いていないハガキに文句を言って、理沙は幼稚園の頃から今までの、友達全部を思い浮かべて“F M”と言うイニシャルに当てはまる子を探した。  しばらく考えたが結局誰も思い浮かばない。 「マジ、気持ち悪いんだけど……」  理沙は“F M”から来たハガキを束の一番下に重ねて、これから始まる新年にちょっとだけ不安を覚えながら自宅に入っていった。
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