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「お帰りなさい。ネロアさん、ユナさんっ」
ドアを開けて入ってきた二人組みにシャロン=ハーディアが駆け寄る。
「よう、シャロン」
「ただいま、シャロンちゃん」
それに対し、二人は優しい笑顔で応えた。
「ちゃんといい子にしてたか?」
少年―――ネロア=クレットは、幼い顔立ちの少女の頭を撫でた。
やや垂れ気味ながらクリッとした瞳、そして裾の広がったスカートが少女の印象をさらに幼く見せる。
「もうっ、子供扱いしないで下さい。私もこの間十六歳、ついにネロアさん達の三つ下になったんです。このまま一気に追い抜かします」
「いや、無理だから」
「はい、シャロンちゃん。誕生日おめでとう」
ネロアの後ろから、ユナ=クレットが出掛け先で買った誕生日プレゼントをシャロンに差し出す。
「わぁ、ありがとうございます」
大きなくまのぬいぐるみを抱き締めて嬉しそうに笑う少女。
その姿はやはり歳相応には見えずネロアは苦笑するのだった。
「あら。お帰りなさい、二人とも」
台所から、タオルで手を拭きながら現れる女性。
その顔立ちはユナに、正しくはユナの顔立ちがその女性に似ている。
「お母さん、ただいま」
「ただいま、タリスさん」
女性の名はタリス=クレット。
この家の家主であり、ユナの母親、ネロアの育ての親にして、シャロンの養母である。
「二人とも、お仕事ご苦労様。元気に帰ってきてくれて嬉しいわ」
ユナとネロアの変わりない姿に、タリスは優しく目を細める。
「おかげさまで。はい、タリスさん。今回の稼ぎとお土産です」
そう言って、ネロアは木箱一杯の野菜を家の中に運んで見せる。
「あらあら、こんなにたくさん助かるわ。じゃあ今日はシャロンちゃんの誕生日祝いも併せて、ごちそうにしましょう」
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