第一章 日常の崩壊

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 … 陽が傾きかけ、村中に夕食の匂いが漂う頃、クレット家も例に漏れず団欒を楽しんでいた。 「いやしかし、最後の仕事は大変でしたよ。メガウフルの大群が…」 食卓を囲み、ネロアが旅の土産話を始める。 クレット家はネロアとユナの出稼ぎで生計を立てている。 彼らの収入源は主に魔物退治。 今回は東の海から北へ渡り、南下しながら村へ帰ってきた。 「でね。そしたらネロアが」 「バッカ。それは言うなっての」 夜の帳に包まれても、クレット家の食卓は話題が尽きない。 「ネロアさん、飲み過ぎですよっ」 「堅いこと言うな、シャロンも飲め」 「わわっ」 「お母さ~ん、飲んでる~?」 「ユナはちょっと飲み過ぎね」 穏やかな時間が流れる中、夜は次第にふけていった。
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