第一章 日常の崩壊

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 § 白。 見渡すかぎりの白。 自分の影さえ白く、地に足が着いているかも定かではない。 真っ白な世界の中、唯一緋色を放つ少年。 「どこだ、ここは…?」 ネロアは神経を集中させる。 目に映るものが何も無い以上、気配を察する他はない。 索敵は彼の得意分野だったが、どこからも何も感じられなかった。 「夢にしては随分感覚がはっきりしてるな」 目の高さに手を持ち上げ、拳と掌を繰り返す。 五体の満足を確認していると、突如前方に気配が生まれた。 背中の愛剣を取ろうとして右肩の上で虚空を掴む。 距離を置こうとするも体は浮いていて後退できない。 周りの痛いほどの白、その中にありながら目に見えてはっきりと光が集中する。 それは不思議と眩しくはなく、少年は光に包まれるような感覚にとらわれた。 懐かしささえ感じる安堵感の中、微かな声が耳につく。 《……い………なさい》 「…なんだって?」 《…目覚めなさい…》 透き通るような少女の声。 初めて聞くその声に少年は尋ねる。 「それは、起きろってことか?残念だが、それができりゃとっくにやってる」 《…目覚めなさい…自分の力に》 その言葉に、今度は探るように問いかける。  「ならアンタは、俺の力を知ってんだな?俺の力は…」 《目覚めなさい…目覚…なさ……》 少女の声が遠ざかる。 煮え切らないネロアは光に向かって手を延ばした。 「待てよ!こっちは聞きたいことが…っ」 指先が触れようかという瞬間、光は霧散し、白から転じて意識は黒く塗り潰されていった。
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