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「……て……きて…」
遠くから再び聞こえる少女の声。
しかしそれは先程とは違う声だ。
「…起きて。起きてっ」
聞き覚えのある声と共に、体が左右に揺り動かされる。
「ネロアってば!」
そう呼ばれた瞬間、少年は一気に目が覚めた。
全身に大量の冷水がぶちまけられたからだ。
「ごほっごほごほ……なにしやがる」
「だってネロア、起きないんだもんっ。そんなことより、大変なんだよ。えーと、んーと…」
咳込みながら抗議するネロアを『そんなこと』で片付け、ユナは纏まらない言葉で何かを伝えようとする。
「何をそんなに慌ててるんだ。タリスさんでも居なくなったか?」
ネロアの言葉にユナは目を見開く。
「どうした」
「当たり」
「は?…まさか」
あてずっぽうなネロアの予想。
「お母さん、どこにも居ないの」
それは見事に的中したのだった。
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