第一章 日常の崩壊

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 § 「……て……きて…」 遠くから再び聞こえる少女の声。 しかしそれは先程とは違う声だ。 「…起きて。起きてっ」 聞き覚えのある声と共に、体が左右に揺り動かされる。 「ネロアってば!」 そう呼ばれた瞬間、少年は一気に目が覚めた。 全身に大量の冷水がぶちまけられたからだ。 「ごほっごほごほ……なにしやがる」 「だってネロア、起きないんだもんっ。そんなことより、大変なんだよ。えーと、んーと…」 咳込みながら抗議するネロアを『そんなこと』で片付け、ユナは纏まらない言葉で何かを伝えようとする。 「何をそんなに慌ててるんだ。タリスさんでも居なくなったか?」 ネロアの言葉にユナは目を見開く。 「どうした」 「当たり」 「は?…まさか」 あてずっぽうなネロアの予想。 「お母さん、どこにも居ないの」 それは見事に的中したのだった。
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