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落ち着け。
落ち着くんだ。
『手の中のお守りに意識を集中して』
(集中……)
優香はゆっくり目を閉じる。
と、途端に、優香の小さな手の中の、数センチほどしかない布袋から、かすかな青白い淡い光が放たれだした。しかし、その光はあまりに弱弱しく、優香自身も気づかないほどであった。
『集中して……集中して……そして、俺の名を呼べ!!』
ふいに優香の瞳が力強く開かれた。
(お兄ちゃんっ、助けてっ!!)
まるで爆発が起きたかのように、青白い光は一気に輝きを増した。
◇◇◆◇◇
ゆずるは素早く辺りを見回した。
プールの排水溝の先は、また小学校の校舎内のようだ。いったい校舎のどこに飛ばされたのだろう。
最初の教室にもどった、ということはない、と信じたいが、夢の世界ではそれもあり得ないとは言い切れない。
そんなことを考えながら、ゆずるは恐る恐る目を開けた。
『今度はどこに入口があるんだ?』
狭苦しそうに頭をもたげて、妖狼が言った。
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