6 鬼ごっこ

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 間違えるわけない。  優香の思念が、確かに“聞こえた”。  生きてる!  確かに、まだこの世界に生きている!!  ゆずるは、わけのわかっていない直久を振り返り、思わず歓喜の声を上げた。 「直! 優香の声だ! 今、優香の声が聞こえたんだ!」 「まじかっ!」 「優香はまだ無事だっ、生きてる!」 「そうだな。早く見つけてやらないと!」  直久の顔にも、久しぶりに笑顔が戻っていた。だから、ゆずるも自然に笑顔を返した。  優香はきっとまだ無事だ、そう信じていた。でも、どこかで、もう駄目かもしれない。夢魔に食べられてしまったかもしれない。そう思う時もあった。  これで、生きていることは分かった。あとは、優香を夢魔よりも早く保護して、この薄気味悪い夢の世界から抜け出すだけだ。  ゆずるの瞳に、みるみるうちに希望の光が灯って、力強く光り出した。 「先詠。優香の保護が優先だ。優香を探しに行け。他の狼たちと協力して、何がなんでも探し出せ」 『わかった。でもどっちから“声”が聞こえたんだ? 俺には方向までは分からなかった』  妖狼は優香の気配を探ろうと、首を右に左にひねりながら、鼻をひくひく動かした。
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