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大丈夫。
心配するな。
笑顔こそ見せないが、振り返ったゆずるの瞳がいつになく優しくて。
ほっとした。
ほっとしたら、強ばっていた自分の体から力が抜けた。
涙がでそうになった。
よかった。
ゆずるが一緒でよかった。
大丈夫。
俺は一人じゃない。
大丈夫――。
「絶対……」
直久は思わずつぶやいた。
「絶対、三人で帰ろう」
優香を見つけて、誰も欠けることなく。
無事に、皆で帰ろう。
――帰るんだ。
自然と、ゆずるの手を握る右手に力がこもる。するとゆずるがその手を握り返してくれた。
「ああ。皆で帰ろう」
ゆずるは、柔らかな笑顔になった。
その瞬間、直久は自分の胸が跳ね上がるのを感じた。
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