3902人が本棚に入れています
本棚に追加
ゆずるが笑ってる。
自分に笑いかけてる。
直久の記憶をいくら遡っても、ゆずるのこんな花のような笑顔にぶち当たることはない。
初めてかもしれない。
なんだか、よくわからないが、すごく嬉しくなった。
初めて、あの恐ろしい姉に褒められた時のような。
クラス中の女子に「直久くんてカッコいい!」とか言われた(妄想)時のような。
胸の中が、ぽかぽかと暖かくなるような、そんな気持ちだった。
だから、直久も満面の笑みになった。
「よおしっ! この直久様に任せておけっ!! みんなで帰るぞおーーっ!!」
繋いでいた手を突き上げて叫んだ。
何でもできるような気がした。
今なら、何も怖くない気がした。
「ば、ばか! でかい声を出したら、夢魔に見つかるだろう!」
後から、ゆずるのそんな小言が聞こえてきたが、気にしない。
大丈夫。帰れる。
帰るぞっ!!
「優香、待ってろ! 直兄ちゃんが今、迎えに行ってやるぞっ!」
最初のコメントを投稿しよう!