6 鬼ごっこ

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 ゆずるが笑ってる。  自分に笑いかけてる。  直久の記憶をいくら遡っても、ゆずるのこんな花のような笑顔にぶち当たることはない。  初めてかもしれない。  なんだか、よくわからないが、すごく嬉しくなった。  初めて、あの恐ろしい姉に褒められた時のような。  クラス中の女子に「直久くんてカッコいい!」とか言われた(妄想)時のような。  胸の中が、ぽかぽかと暖かくなるような、そんな気持ちだった。  だから、直久も満面の笑みになった。 「よおしっ! この直久様に任せておけっ!! みんなで帰るぞおーーっ!!」  繋いでいた手を突き上げて叫んだ。  何でもできるような気がした。  今なら、何も怖くない気がした。 「ば、ばか! でかい声を出したら、夢魔に見つかるだろう!」  後から、ゆずるのそんな小言が聞こえてきたが、気にしない。  大丈夫。帰れる。  帰るぞっ!! 「優香、待ってろ! 直兄ちゃんが今、迎えに行ってやるぞっ!」
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