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「行こう」
ゆずるは、呆然とする直久の横をすりぬけて歩きだした。慌てて直久もそれに続く。
と、その瞬間。
────ジャジャン!!
まるで、直久たちの入場を歓迎するかのように、ピアノの音が体育館の空気を揺らした。
「な!?」
慌てて直久は視線を走らせる。その視線も、すぐに異様な物に吸い込まれるようにして動けなくなった。
体育館のステージのグランドピアノの前に、真っ赤な物体がある。いや、真っ赤な頭をして人物がいる。かなり長身に見えた。
緑、黄色の洋服で全身を被うその様はどこから見ても異様だ。目がチカチカしそうな原色の配色に直久は目眩さえ起こしそうになった。
(何だ、あれ!!)
その原色の人物、否、物体が、突如激しく動き出した。
『ねこふんじゃった
ねこふんじゃった
ねこふんづけちゃったら
ひっかいた
ねこひっかいた
ねこひっかいた
ねこびっくりして
ひっかいた 』
突然のピアノ弾き語り。曲目は、『ねこふんじゃった』というチョイス。
直久もゆずるも呆然となった。
いったい何が始まったというのか。
まったく状況が飲み込めない中、なおもそのリサイタルは続く。
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