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「ゆずる?」
「こいつだ」
ゆずるが唸るように言った。
「こいつが、夢魔だ」
「え? 夢魔ってつまり……」
「優香を連れ去った張本人だ」
「ええっ!?」
だって、出会ったらまずいんじゃなかったか?
ゆずるの力でも敵わないって言ってなかったか?
つまり。
これって。
(大ピンチーーっ!?)
がーんと、後頭部を殴られたような衝撃が、直久の全身を駆け巡った。
しかしながら、直久が機能停止していたのは数秒のこと。こういう時の直久は頭の回転が恐ろしく速い。すぐさま踵を返した。
「やばくない!? いや、やばいって。帰ろう。今なら間に合う。気持ちよさそうに歌ってる間に、お暇しようぜ! そうしよう、引き返そう」
ところが、直久の首根っこをゆずるが引っ掴む。
「無駄だ。とっくに気づかれて、閉じ込められた」
「ひえええええ」
気持ちよさそうに歌う夢魔の声が、さらに直久を恐怖に凍りつかせていく。
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