6 鬼ごっこ

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 あっという間に、直久たちを中心にして、円を描くように黒ネコの輪ができていた。しかもその輪は、じりじりと詰め寄ってくる猫たちによって、徐々に狭まっている。 『ねこふんじゃった  ねこふんじゃった  ねこふんづけちゃったら  とんでった  ねことんじゃった  ねことんじゃった  ねこおそらへとんじゃった』  ピアノの曲は、そのリズムをだんだんと早め、大きくけたたましくなっていく。  そのリズムと同調するように、直久の心が逸る。  気がつけば、体育館は黒ネコで埋め尽くされている。  賭けてもいい。絶対ただのネコじゃない。  直久の野生のカンが警報を鳴らしていた。    逃げろ!  逃げるべきだ!  でもどうやって!?  背中をイヤな汗が、つーっと滴り落ちていく感覚に、全身の肌がざわめいた。 「だから猫は嫌いだ」  ぼそりとゆずるが呟いた。 「ええっ。今そんなこと言ってる場合っ!?」 「ふん。我が家は代々、犬派なんだよ」  毒づきながらも、ゆずるの喉がなる音が聞こえた気がした。  その時、ネコたちの前進が止まった。  同時に、ピアノの音もぴたりと止む。  気持ち悪いほどの静寂が訪れた。
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