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あっという間に、直久たちを中心にして、円を描くように黒ネコの輪ができていた。しかもその輪は、じりじりと詰め寄ってくる猫たちによって、徐々に狭まっている。
『ねこふんじゃった
ねこふんじゃった
ねこふんづけちゃったら
とんでった
ねことんじゃった
ねことんじゃった
ねこおそらへとんじゃった』
ピアノの曲は、そのリズムをだんだんと早め、大きくけたたましくなっていく。
そのリズムと同調するように、直久の心が逸る。
気がつけば、体育館は黒ネコで埋め尽くされている。
賭けてもいい。絶対ただのネコじゃない。
直久の野生のカンが警報を鳴らしていた。
逃げろ!
逃げるべきだ!
でもどうやって!?
背中をイヤな汗が、つーっと滴り落ちていく感覚に、全身の肌がざわめいた。
「だから猫は嫌いだ」
ぼそりとゆずるが呟いた。
「ええっ。今そんなこと言ってる場合っ!?」
「ふん。我が家は代々、犬派なんだよ」
毒づきながらも、ゆずるの喉がなる音が聞こえた気がした。
その時、ネコたちの前進が止まった。
同時に、ピアノの音もぴたりと止む。
気持ち悪いほどの静寂が訪れた。
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