3902人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
ゆずるが切り返した。
「今、鬼ごっこしてるんだ。飽きたら食べようと思ったんだよ。でも、飽きる前に君が来た。君がもってる力はあの子の比じゃないよね。だって君は、九堂家の後継者だろう?」
ゆずるは返事の代わりに、夢魔を睨みつけた。
「あれ、でも変だね」
そう夢魔が言い放った瞬間、その姿が消えた。いや、動きが早すぎて消えたように見えたのだ。
ひとつ瞬きした間に、夢魔はゆずるの目の前へと移動していた。
「うわっ」
突然、目の前に現れた不気味な顔に、直久は思わず声をあげ、ゆずるも息を飲んだ。
しかも目線は長身の直久とほとんど変わらない。
声が少年のように高いから、かってに子供のピエロだと思っていたが、中身はともかく見た目は大人のナリをしているらしい。
「ねえ君、本当に後継者なの?」
ゆずるがとっさに何か術を唱え、胸元からお札を取り出した。が、その時には、再び夢魔は少し離れた位置に移動してしまう。
「あれあれ~? おかしいな~」
もったいつけるように言うと、夢魔はくるりとこちらを振り返った。
「だって、君――女の子だよね」
最初のコメントを投稿しよう!