7 最高に使いたくない最後の手段

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  「お前、バカだろう」  直久は思わずソレを指さしながら言った。  このけったいな格好をした、奇怪な物体は、何をもったい付けて言ったかと思えば――。 (誰が女だって?)  仏頂面のゆずるのどこをどう見て、女だと言うのだろうか。  確かに、ゆずるは自分に比べれば細身だし、背も低い。  だが、細身なのは、体育の授業すら見学するという究極の運動不足のなせる技だし、日の当たらない神社の境内で祈祷してばっかりいれば、真っ白な素肌になるのは至極当然というものだ。  背丈だって、長身の部類に入る直久たち双子より低いだけのことだ。  なるほど、ゆずるに男臭いところは無い。それは確かだ。だが、果たして女子っぽい所があるかと言えば、これまた、微塵も見当たらない。百人に聞いたら百人が納得するはずだ。こいつは男だ。 (ったく。ゆずるが女だったら俺も女だっつうの!)  冗談も休み休み言え。  いや、冗談だとしたら、なんて出来が悪い。自分だって、もっとましな冗談を考える。  ああ、嫌だ嫌だ。  なんだか頭が痛くなってきた。
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