7 最高に使いたくない最後の手段

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 直久は、深く深くため息をつくと、首を左右に振り、諭すように言った。 「ちゃんと見えてねえんだろう? お前さ、悪いこと言わないから、その悪趣味な化粧やめたら? 目の周りに星とか書いちゃってるから、よく見えないんだぜ? だいたい、その赤い鼻とか、付ける意味あんの? 邪魔だろう、どう考えても。でかすぎだって。下見えてるのか?」  だいたい、その格好はなんだ。  パジャマにしては趣味が悪すぎる。右半身と左半身で色が違う。赤と緑に黄色ときたら、お前は信号かっ! と叫びたくなるじゃないか。 「悪いことは言わないから。もうちょっと、ましな格好した方がいいよ。俺が言うのもなんだけど、見た目で信用を無くすこともあるんだぜ。わかるか? どんなすごい真実だったとしても、その格好で言ったら、だ~~~~~~れも信じないってことだ。ま、今回のは全くもって、ネタ自体がヒド過ぎて、信じる信じないとかいう以前の問題だけどな」  したり顔で直久が言いきったところで、初めて夢魔の視線が直久の瞳を捉えた。 「――っ!」  睨まれたわけでもないのに、その冷たい漆黒の瞳に、一瞬、金縛りにでもあったように、指一つ動かせなくなった。 (な……なんだ……)  直久には、夢魔の強大な魔力は見えていない。だが、確かに体が反応していた。  異様な威圧感。夢魔の視界に入っただけで、自分と夢魔の間にある空気が一瞬で凍りついたのを感じた。  目が離せない。呼吸すらできない。  髪の毛1本動かせないほどの恐怖が、一気に体を駆け上がってくる。 「君…………誰? うるさいんだけど」  明らかに不機嫌そうに夢魔が言った。まるで、おもちゃを目の前にして、取り上げられた子供のような表情だ。
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