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その目は、明らかにゆずるしか見ていない。
その夢魔の口元がゆっくり、ゆっくり、左右に引き上がっていく。
(――っ!)
言いようのない恐怖が襲ってきた。
笑ってる。
嬉しそうに笑ってる。
余裕なんだ。あいつは、ゆずるの力なんて、これっぽっちも恐れていない。
そんなに、力の差があるってことなのか。
――死
その一文字が頭を埋め尽くしていく。
想像してしまう。
せずにはいられない。
文字通り、喰われる自分の姿を。
自分の腕や足に噛みついて。
むちゃむちゃと肉を喰いちぎり。
ずるずると血を啜り……びしゃびしゃと内臓を、骨をしゃぶるそのおぞましい姿を!
「うっ……」
急激に胃が熱くなり、強い吐き気がこみ上げて来たが、なんとか堪える。
でも、体の震えを止めることはできそうにない。
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