7 最高に使いたくない最後の手段

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   怖い。  そんな言葉では言い表せないほどの恐怖に、悲鳴も出ない。  ふと、ゆずるが呟いた。 「大人しく――喰われてやると思うなっ!」  ゆずるが両手を胸の前で、パンと打ち鳴らし、強力な上昇気流が巻き起こった。さすがの直久も、その風が結界を張る時に起こる現象だということは知っている。  ゆずるが張る結界ならば、一族最高級の結界だ。これを破れる強力な妖魔は、そういない。そして、強力な妖魔だとしても、小さな穴を開けて、結界をこじ開けるまで、時間がかかるはずだ。 (そうか、時間稼ぎだ)  直久はピンときた。  その間に、ゆずるの使役する妖狼たちが、優香を見つけ出してくれれば。そうすれば、狼たちはこっちに戻ってくる。 (助かるっ!! 助かるんだっ!!)  直久は、ぐっと歯を噛みしめ顔を上げると、まっすぐ夢魔を睨んだ。だが、夢魔はまったく堪えていない。逆に、その表情に、余裕の色が濃くなっていく。  気のせいだろうか。  気のせいであってほしい。  直久には、そう祈るように夢魔を睨み続けることしかできなかった。 「ふ~ん、結界はったの?」  面白いことするなあ、と言いながら、こちらをじっと見ている。
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