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(だから、あれほど、日が暮れる前に家に帰れと言ったんだ。ヤツラの力が弱まっている昼間のうちに……)
ゆずるは、静かに寝息を立てる妹の額にそっと触れた。その厳しい目の奥に、かすかに愛おしさが見え隠れしていた。
ゆずるが、唯一、心安らげる存在。
かわいい、いとしい――妹。
ゆずるの持っていないものを全て持って生まれ、彼女が望むものは何でも与えられ、誰からもかわいがられて育った――たった一人の妹。
「待ってろ。俺が必ず助けてやる」
ゆずるは、妹の額を撫でながらそう言うと、眩しそうに目を細め、優しい笑顔になった。
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